ああ浦　さびしい女！

「あなた　いつも遅いのね」

ぼくらは過去もない未来もない
さうして現実のものから消えてしまった。　……

浦！

このへんてこに見える景色のなかへ
泥猫の死骸を埋めておやりよ。


　　　　　　　萩原朔太郎
　　　　　　　　　　　　　　『猫の死骸』

お前正宗わしゃ錆び刀
　　おまえ切れてもわしゃ切れぬ

　　　　　　　　　　　　　　古典都々逸

After this,Jesus,knowing that all things
were now accomplished,that the Scripture
might be fulfilled,said,"I thirst!"

      　　　　　　　　　　　　　　NEW TESTAMENT -JOHN-



この後、イエスは、すべてのことが今や
成し遂げられたのを知り、「渇く」といわれた。
こうして、聖書の言葉が実現した。

　　　　　　　　　　　　　　　　新約聖書　ヨハネによる福音書

　　　　　　　　　　　　　　　　

「盆、暮れ、正月が一気にきたってぇけど、アレ
  忙しいんじゃなくて今じゃ長期の休みがきたってことじゃね」


　　　　　　　　　　　　　　―― どの口が叩くのか
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　[或る日の出来事]

ああ、マリア。
マリア、マリア、マリア。
ボクの愛。ボクの魂。ボクのすべて。
極限愛《ラヴ・マックス》。
告白しよう。
ありったけの誠実さをこめて。
正直、こうしてこの腕で真正面からキミをぎゅっと強く
抱きしめられる時がやってくるなんて、
信じることのできなかった日々もたしかにあった――。
でも、今、ボクの腕のなかにはキミがいる。

ボクは何ものにもかえがたい、
大切で、貴重で、美しく、気高くて、
愛おしくてたまらない一輪の薔薇を、
キミを、手折ってしまわないように、
それでいてきつく抱きしめて耳許で囁く。


「大丈夫。ボクを信じて。」
　　　　　　　　　　　　
　　　　　
　　
　　　――《昼飯時》〔ランチタイム〕の頭領〔マスター〕　アジアン

　　　　　　　　　　　　『薔薇のマリア　Ⅳ－LOVE'N'KILL－』

いっちく、たっちく、おうやおや。
ねずみが時計をかけあがる。
柱時計をかけあがる。
柱時計がチーンとうつ。
ねずみがすたこらかけおりる。
いっちく、たっちく、おうやおうや。


　　　　　　　　　　　　北原白秋
　　　　　　　　　　　　　　『まざあ・ぐうす』

ここからそこへは行けない。
いや、行けないことはないが、
はっきり言って楽しい旅路にはならないだろう。
　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　―― 熟達の魔術師、アーテイ
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　上天の閃光　　

　　　　　　　

陰口をきくのはたのしいものだ。
人の噂が出ると、話ははずむものである。
みんな知らず知らずに鬼になる。
よほど、批評はしたいものらしい。

　　　　　　　　小林秀雄
　　　　　　　　　　『小林秀雄初期文芸論集』

現実という絵はまるで騙し絵《トロンプルイユ》のよう。
人によって、立場によってまるで見方が変わってしまう。
あなたの真実が、他の人にとっても真実だと思いこまないことね。

　　　　　　　　　天香學園　3年C組
　　　　　　　　　　　　　　　　　きみのクラスメイト　白岐幽花
　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　『九龍妖魔學園紀』
　　　　　　　　　　　　　　　　　－7th.Discovery －地獄の才能

斯く城塞を歩む様はさながら、
昏睡《ねむり》の如く重く
疾病《やまい》の如く深く
時間《とき》の如く苦く
貪欲《のぞみ》の如く辛《から》く
虚偽《いつわり》の如く甘く
真実《まこと》の如く暗く
魔法《きせき》の如く難く
宿業《むくい》の如く滑《ぬめ》り
理性《ひかり》の如く渋く
歴史《ながれ》の如く落ち
栄光《よろこび》の如く短く
罪悪《つみ》の如く飢え
審判《さばき》の如く泣き
運命《さだめ》の如く呻き
偶然《たわむれ》の如く悟り
死《おわり》の如く、逃れること叶わず。

　　　　　　　　　上遠野浩平
　　　　　　　　　　　『紫骸城事件』　扉絵

世にしたがへば、身くるし。
したがはねば、狂はせるにゝたり。
いづれの所をしめて、いかなるわざをしてか、
しばし此の身をやどし、たまゆらも、
こゝろもやすむべき。

　　　　　　　　　　　　　鴨長明
　　　　　　　　　　　　　　　『方丈記』

Über allen Gipfeln
Ist Ruh,
In allen Wipfeln
Spürest du
Kaum einen Hauch;
Die Vögelein schweigen im Walde.
Warte nur,balde
Ruhest du auch.

               J.W.v.Goethe,Wandrers Nachtlied



峰はみな
しずもり
梢に
風の
そよぎなく
小鳥は森にふかく黙す
待てしばし　やがて
おまえも憩えよう

　　　　　J.W.v.ゲーテ　　『旅人の夜の歌』
                                 


                 

さあさ筆持ち唄うておくれ
　　　　ほんに愛してくれんなら