窓辺にかけてある〔籠の中の〕カナリヤが夜に歌っていました。
蝙蝠が彼女の声を聞きつけ近くにやってきて、
彼女に何故昼は大人しくしていて夜に歌っているのですか、
と訳をききました。
カナリヤが、私がこうしているのはいわれのないことではありません、
と申しますのは、私は或る日のこと昼に歌っているところを
捕らえられたのです。
そのためにその時から慎み深くなったのです、と答えましたので、
蝙蝠は

「しかし用心なさらねばならぬのは、何の足にもならない
  今ではありません、それはあなたが捕らえられる前のことですよ。」

と言いました。

＊この話は、不幸の後では後悔も役にたたぬ、
　 ということを明らかにしています。





 

羊飼が非常に大きな犬を持っていましたが、
これに彼は死んで生まれた仔羊や羊の死んだのを
投げてやる慣わしがありました。
ところで或る時、羊の群れが小屋の中にはいっていると、
犬が羊どもに近づいて行って彼らにじゃれついいるのを、彼は見て

「おい、この野郎、貴様がこ奴らに望んでいることが
  貴様の頭の上に起こればいいんだ。」

と言いました。


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

ヘルメスが人間の間でどれほど尊敬されているかを知ろうと思い、
人間に化けて或る彫刻家の仕事場へやってきました。
そしてゼウスの像を見ていくらだと尋ねました。
と、彼は一ドラクメーだと答えましたので、
彼は笑ってヘラはいくらだと尋ねました。
それはもっと高いと言いましたので、
彼はまた自分の像をも見て、
自分は天使でもあり利益もあらたかであるから、
人間どもは自分を高く買っているだとうと思いました。
それだからヘルメスはいくらだと尋ねました。
と、彫刻家は言いました。

「えゝ、そうですね、もしこれらの像を買ってくださるなら、
  これはおまけに差し上げましょう。」

この話は、
他の人々には何とも思われていない
虚栄心の強い人にあてはまるものです。