「それにカルシウムが不足すれば、
  怒りやすくなるという俗説には異論がある。
  電位差で生体内の神経伝達を起こす
  カルシウムとナトリウムの濃度が、感情に影響を及ぼすほどに
  変化したら、むしろ重病を疑え」

　　　　　
　　　――アシュレイ・ブフ＆ソレル咒式事務所所属
        　　　　    十三階梯　後衛　化学練成攻性咒式士
                　　　　　　　　　　　　　ガユス･レヴィナ･ソレル

　　　　　　　　　　　　　　　『されど罪人は竜と踊るD.D.』
  　　　　　　　　　　　　　　　　五巻　Hard Days & Nights
                                               　　　　　　　　　 「道化の予言」


　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　

あなたの敵は、あなたの敵になる程度には強力である。
あなたの味方は、あなたを背後から刺せる最大の脅威である。
背後には気をつけよ。そこにはあなたの眼はないのだから。


　　　　　　　　　パジドー・エレンゴ
　　　　　　　　　　「ハラエルのための物語」
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　神楽暦一一二三年

　　　　　　　　　　　　　　　　　浅井ラボ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　『されど竜は罪人と踊る
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　D.D.４　Soul Bet's Gamblers』
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　十七章　黄金の夜

この部屋、とても暑いですものね。
ハンカチを貸してあげましょう。
いいのよ。
遠慮しないで、私は、優しい人だってよくいわれるの。
私のハンカチであなたの汗がおさまるならば、とてもいいことですもの。
私が拭いてあげましょう。
逃げなくてもいいのよ。
私に恥をかかせる気？
あなた、まさかそんなことはしないでしょうね。
私はね、親切でいっているのよ。
私は、何もあなたの汗を拭くために
ハンカチを持っているわけじゃないのよ。
親切で、いってるの。
あなたが私の親切を無碍にするということは、立派な裏切り行為よ。
あなた、私を裏切るの？
そんなこと、まさかしないわよね。
私のいったこと、あなたは聞いていなかったかしら？
あなた、耳があるんでしょう？

もう一度いいましょうか？

私はね、人に裏切られたことがないの。
人に裏切られることが大嫌いなの。
私ね、死ぬまで一度だって人に裏切られるような人生は送りたくないの。
いいえ、思っているだけじゃなくて、私は実行するわ。
だからね。
私を裏切る奴は殺すの。
私の幸せな人生を邪魔する奴だから。
当然の報いとして死んでもらうの。

・・・今度は、聞こえたかしら？

そうよ、逃げることはないのよ。
私は、親切でいっているのだから。
別に、あなたの汗をぬぐうことで、あなたをどうしようってわけじゃなくてよ。
まあ、こんなに汗をかいて。
大丈夫。
私に任せなさい。
あなたの汗、きれいに拭き取ってあげるから。
それで私のハンカチが汚れたからといって、
心配することも遠慮することもないわ。
どんなきれいなハンカチだって、汚れるためにあるんですもの。
それがハンカチが生まれてきた宿命ってものでしょ。
だから、いいの。
私の親切を無駄にしないでね。

そう、・・・・・・いい子ね。

ちゃんと拭いてあげる。
あなたの汗が一滴残らずなくなるまで、拭いてあげる。
だから、おとなしくしていなさいね。
ほら、きれいになった。

・・・・・・いいこと。
せっかく私が汗を拭いてあげたんだから、もう汗を流さないでね。
あなたが汗を流すとね、私の親切が無駄になってしまうの。


わかった？


せめて、私の話が終わるまでは汗なんて流さないで。
あなたが私を裏切らないのなら、
これから先あなたのこと目をかけてあげてもいいわ。
そう、思ってさえいるのよ。
だから、私を裏切らないで。
絶対に、絶対に裏切らないで。



　　　　　　――語り部の一人　
　　　　　　　　　　三年A組　岩下明美
　　　　　
　　　　　　　　　　『アパシー学校であった怖い話１９９５』
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　第五話　偽りの愛

いいか、ラッド。
俺みてえな、なんの取り柄もない男が
列車ジャックなんて修羅場の中に行ってみろ、
俺はきっと、お前のぶっ放した銃の
流れ弾に当たって死ぬに決まってるんだ。
そうじゃねえとしても、時速１００キロで走る列車の中で
ゴタゴタ暴れてみろ、躓いた拍子に、石炭をくべる暖炉の中に
頭から突っ込んで焼け死ぬかもしれねえし、
足を滑らせて線路の上に落ちて、そのまま車輪に巻き込まれて、
ミンチになるかもしれねえ！
乗客の中の腕っ節の強い奴がいて、鍛えていない俺の首なんざ
ポキリと折られるかもしれねえし、都市伝説のレイルトレーサーに
頭から喰われるかもしれねえし、緊張のあまり心臓発作で
死ぬかもしれねえ！
ただでさえこの世の中は危険だってのに、
わざわざ死にに行く理由が何処にある！？


　　　　　　　――ルッソ・ファミリー随一の殺し屋
　　　　　　　　　　　殺人鬼ラッド・ルッソの幼馴染みの一般人
　　　　　　　　　　　　　　　　“Who are you?”『誰だお前？』のWho『フー』
　　　　　　　　　　　　　　

                   　『バッカーノ1931年臨時急行偏 Another Junk Railroad』
                                                          　　　　　　　ターミナル『前日談』

「じゃあ俺からの質問だ。
『いったいどうしたら、俺の不幸を止められるのでしょうか？』だ！」
「･･････ガユス、私には貴様の未来が、
  何となく完璧に分かっているような気がするのだが･･････。
  真剣に答えて言いのか？」
「･･････すいません。やっぱりそれだけは聞きたくないです。」



――アシュレイ・ブフ＆ソレル咒式事務所所属
            十三階梯　後衛　化学練成攻性咒式士
                ガユス･レヴィナ･ソレル
            十三階梯　前衛　生体攻性咒式士
              ギギナ･ジャーディ･ドルク･メレイオス･アシュレイ･ブフ


　　　　　　　　　　されど罪人は竜と踊る　
  　　　　　　　　　　　ザ・スニーカー　2004四月号　特集

「ギギナ。お前･･････俺の幸せを吸い取ってないか？」
「ガユスよ。貴様に吸い取れるだけの幸せが残っているとは思えないが？」


           ――アシュレイ・ブフ＆ソレル咒式事務所所属
                        十三階梯　後衛　化学練成攻性咒式士
                           ガユス･レヴィナ･ソレル
                        十三階梯　前衛　生体攻性咒式士
              　　　　　ギギナ･ジャーディ･ドルク･メレイオス･アシュレイ･ブフ


                               　　　　　 されど罪人は竜と踊る　
                                    　　　　　ザ・スニーカー　2004四月号　特集

残念だが、お遊びの時間は過ぎてる。
すでにここは地獄の賭場で戦場なのだ。
賭けられているのは、掛けがえのない自分の魂。
飛び交うのは言葉の銃弾と裏切りの刃だ、なんてね。

――アシュレイ・ブフ＆ソレル咒式事務所所属
            十三階梯　後衛　化学練成攻性咒式士
　　　　　　　　　　　　　　　　　ガユス・レヴィナ・ソレル

                            　　　　『されど罪人は竜と踊る』
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　第三巻　禁じられた数字



 

「あー気分悪い。朝起きても気分が悪い。
  息してても気分が悪い。一年中気分が悪い。」
「貴様が貴様でいるかぎり、それは一生の伴侶だ。
  大事にして添い遂げろ。」


――アシュレイ・ブフ＆ソレル咒式事務所所属
            十三階梯　後衛　化学練成攻性咒式士
                ガユス･レヴィナ･ソレル
            十三階梯　前衛　生体攻性咒式士
              ギギナ･ジャーディ･ドルク･メレイオス･アシュレイ･ブフ

                          されど罪人は竜と踊る　三巻　序章

本書の科学知識の錯誤や論理矛盾は、
全て筆者の弟の母の孫に責任があります。
つまり筆者自身に。
ただ、罪を憎んで人を憎まず。
という言葉を大事にした方が（私に都合が）いいと思います。

                       浅井ラボ　
                           されど罪人は竜と踊る　第一巻　あとがき

「今後のガユスは死･･･。」
「その先は続けるな嘘でもいいから、
  幸福な未来を予測しろ。」



　　　　　　　――軽食屋の婿養子
　　　　　　                             ホートン
                           十三階梯　後衛　化学練成攻性咒式士　
　　　　　　　　　　　　　　　　　ガユス・レヴィナ・ソレル


　　　　　　　　　『されど罪人は竜と踊る』　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　三巻　序章
 

二重三重の策を弄するのは二流の策謀家に過ぎない。
本当の策謀家とは、登場人物がいかなる
即興演劇をしようとも、脚本を破り捨てて
劇を脱出しようとしても、そこはまだ劇外の劇という
 演出にすぎないように、世界自体を舞台とするのだよ。




　   　――ツェベリン龍皇国　枢機卿長
　                 　　モルディーン・オージェス・ギュネイ　
     　　               　『されど罪人は竜と踊る』
　　　　　　　　　　　第一巻　第十二章　そして全ては走り去る

優しき天使が、地を救おうと空を飛ぶ
人の手に届く高さを飛んだため
救いの天使の翼を、肉を、人々が手に欲しがり
最後は、一片の羽すらも残らなかった


　　　　　　　　フルラ・ティオ・キリンスキー
　　　　　　　　　　　「天使の公開解剖所見」
　　　　　　　　　　　　　　　　　　同盟暦七六年


　　　　　　『されど罪人は竜と踊る
　　　　　　　　　　－灰よ、竜に告げよ－』
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　浅井ラボ

「俺たちマイヤーズが強いのは、
　誇り以外に失うものは何も無いからだな、ケリン」
「それって、要するに俺たちが貧乏人の集まりだってことだろ？
　D・D」
「ものは言いよう、語りようさ、逆もまた真なりだ」



――上級士族[セック]だが不良グループ参謀役
　　　　　D・D
　　　　　　[ドナルドエリメンシス・
　　　　　　　デュークロアエリエント・デビルズハカープログラム]

　　　下級士族[デミセック]　不良グループリーダー　
　　　　　　ケリン・ミルダモン


　　　　　　　　　　　　　　　　　　『ガンズ・ハート　硝煙の誇り』